■嘘は表情(仮)

君の笑顔が嘘をつく
君は 嘘なんかついていない と云う
しかし、君の笑顔は
あんなにも饒舌で
有りもしない言い訳を、
脚色に脚色を重ね最早フィクションとなった物語を、
語る。

さり気ない変化など
僕なんかは 見逃す。
それでも伝わって来るそれらは
君がこちらへ
伝えようとしている物だけ。

…
伝えられたい事など
何ひとつ とて
教えてはくれなかった。

…僕が伝えられなかったから。

■傾き(仮)

華美なる衣を身に纏い
さあさあ、踊り明かしましょう
騙すのは己だけで良いのです
笑って 笑って 嘲笑いなさい

鮮やかさに目を輝かせるのなら
それもまた一興
虚しさに襲われたのなら
それもまた一興。

双方共に正しく、間違いであろう
騙すのは自分 騙されるのも自分
踊るのは自分 踊らされるのも自分
気づかない貴方は
まだ傾く余地があるのです

偏見の目を向けられてこそ、生を踊り狂える勇者でしょう？

[つづき]

■ある種の遺言。(仮)

綺麗な世界を望んで
汚いと思ったものを突き放した
そうしたら ふとした瞬間の
ささやかな優しさも失くしました

『どうしようもなかったのです』
あえて言った言い訳を
聞き入れてくれる耳も
もう目前には残されていなかったのです

笑顔　そんな日常の
何気なく溢れ出るそれが
此処にはもう 無かったのです
私が、さらりと、痛めつけたので

あの時、痛んだ胸は
何処へ去ってしまったのでしょう
あの時の痛みは漸く
此処まで帰って来れました

[つづき]

■過剰自制(仮)

壊れてしまうように思う
恐らく 世界が揺れるより遥かに早く
張り詰めた心の音が悲鳴を上げて
己の限界を大きく見誤った
“可能性”という明るかった事実が落ちて来る

《逃げられません》

自分を愛せなかった
自分を
許せず、
“呪う”という矛盾

[つづき]

■面 (仮)

述べられぬ純情が
貴方の視線に塗りつぶされる
苦しいの　苦しいんだよ
伝わらないのね
分かってます。
それでも仮面は外せなかった

後悔は私を呑み込んで
足が外れない　出てこれない
どうしようもない自責の念
振り払えないのは
きっと仮面が顔になってしまったから。

《半分は貴方の所為なのよ》

[つづき]