■嵐(仮)

来なくていいよ
踏み荒らしたのは私だけど
逃げてもいいよ
心を砕かれたく無いのなら

触れ合うものたちを
すべて呑み込んで
磨り潰して　吐き出した
雨が近づいて来るのは
吐き出す汚れを鎮めるため

壊してしまえ
そうすれば戻ることもないから
遠くなる　遠くなる
全ては届かない　後ろへ
もう見なくてもいいよ

[つづき]

■うそつき(仮)

ぽろり、と抜け落ちた
まるい雫と一緒に
部屋の隅に隠した
宝箱もぶちまけてしまって

ああ、見られちゃった、なんて
もう、大切じゃない、なんて
笑って全部、捨てたフリ
出来るだけ、最小限だけ、
ポケットに詰め込んだ

もう、このまま、
皆も忘れてくれるんだろう
しまっていた御手紙も
返しそびれた倍の御返事も
紛れさせたカラフルのおかげで

ずーっと
君に伝えたい事がね
あったんだけど　もう忘れちゃったんだ
なんて、言えないまま、ぐずぐず
君の隣見たって
心が醜くなったって知らないフリ

[つづき]

■種(仮)

ようやく開かれた
口はもう開かなくて
伸ばした指先は
かすりもせずに宙を漂う
一度、もう一度だけ
君と言葉を交わしたい

答え聞かずに
君は何処へ行くの？
僕の温度が届く距離を
求めてよ

暗く　暗く
咲き誇った花は冷たく　深く
切り落とされた明日
残された明日、
壊す腕を掴むのは
君とつながった僕の過去

[つづき]

■嘘を見るくらいなら(仮)

お願いだから怒ってよ　ねえ
君が怒るだろうことをありったけぶつけたのに
何でそんなに感情の無い顔を貫くの？
お願い　お願いだよ
もう傍に居られない事なんて分かってるから
せめて…本当の事を　教えてよ

君の"ほんとう"を見せてさえくれたなら
その後はもう　なんでもいいから
信用できないなら　消せばいい
犠牲が必要なら　利用すればいい

君の"ほんとう"を知ることができたなら
その後はもう　いらないから

ひとときでいいから
うそじゃない
きみがきみのままでいられるなら

僕の全部を、あげるから
(縋るのも怖いなら殺したって構わないんだよ)

[つづき]

■居るだけでいい。(仮)

空が落ちてきて
私を踏み潰そうとしていて
窒息しかかっているんだ
ほらね、また、私の妄想だなんて
そんな簡単に
話を流さないでよ
殺されかかっているのは
紛れも無い事実です

現に私は空を恨んで
空も私を恨み始めた
真っ赤な嘘ではないんだよ？

嵐が来るのは私への当て付け
きっとあの空も狙ってる
いつも素っ気無い顔して
隣に座るあなたの大きさを。

包まれているから
私は、ここで
陽だまりにぽかぽかと
うたた寝も出来るんだ

[つづき]