ひたすらに白だった。僕が見たのはそれだけのはずだったんだけれど、そこには確かに君が存在していた。いくら視覚で捕らえられなかったにしても、それだけははっきりと断言できた。あの温度、あの息遣い、何よりあの優しい歌声は君だった。
距離はそう遠くはなかったはずだ。だってはっきりと聴こえたんだ。君が僕の『生』を請う歌が。
歩みをそちらへ進めようとすると、不意に君は歌を止めた。
…ああ、やっぱり。
君はもう、そっちの世界に行ってしまっていたんだね。
恐らくは、数年前。ほんの数ヶ月会えなかったあの時には、もう。
おばさんがいつも嘘をつく時にするあの悪い癖。僕は覚えていたから、可笑しいとは思ってたんだ。おばさんは僕の事も君のように可愛がってくれていたから、心配してくれたんだね。
そんなおばさんも今頃、君の隣で笑ってるかな?
僕もそこに行きたいよ。もう、君より5つも年をとってしまったよ。だけど、それでもあの頃が、あの頃君といた僕が、僕といた君が、今でも僕の“一番”だよ。
だけど、その君が、僕が生きることを望むなら―――
君は、あと少し、待っていてくれるかな?
どうしても、残したいものがあるんだ。伝えたい人がいるんだ。
終わったらきっと、例え君が望まなくとも戻って来るから。
それまでに…僕は、伝えなきゃ。狂気を纏った友に。
『それは、愛なんかじゃない』、と。
。。後書。。
なんか死んだ人のことが書きたかったんだよ。
最初は、死人が何か伝えようとしてるだけの散文にしようとか思ってたはずなのに、途中で、主人公が死に掛けたからそこへやった来たことにしてみましたよ。
最後のオチは、本当は、
子供に伝えたいことが~とか
そんな感じにしようかな、とか思ってたんですが、
いくら愛がなかったにしろ
奥さんシカトはだめだよなーと思いまして、
最初は、“狂気を纏った妻”って書いてたのを
なぜか無意識に“彼”に変えてました
でもなんかアレなので“友”にしました
どう汲み取ってもいいですよ。
私の中でも2つ候補があって、決めてません。
どちらにせよ、狂気に当てられて
死んでしまうんですが。(うわー
私はそれもハッピーエンドかなーなんて
思ったりしてますぜ くっはは←
友人が、ろくでもない妻と
ろくでもない理由から浮気をして
日を追う毎、ろくでもない人間になっていく様を見て
『そんなものは捨ててしまえ』と諭して
ろくでもない狂気に殺されるのか、
はたまた、
友人が秘密の扉を開いてしまったのか!っていう…
・・・あー 俺いたいな、うん
意外と、主人公も良い人間では無いかもよ、なんて。
後者だったならば特に、完全に。
差別と偏見が無意識に刻まれて
未知を否定して、甘いまま閉ざされた過去に縋る
よくある話。
PR