■絡繰(仮)

ほんの瞬く間の
些細な出来事
そんなものでは
足りませんよ、と
僕の身体の
あちら こちら から
軋む音が聞こえます

まだもう少し
あともう少し
待ちきれないよ
待ちくたびれて

上下 左右 から
軋む音が聞こえます

『あっという間だよ』
逢瀬 のみならず
君の在る時間すら
何万年もの空虚(ブランク)

埋めるべく
求める本能

から くり からだ が
軋む音が主張します

何度でも 何倍も 何時までも。

[つづき]

■失せ物(仮)

失せ物が
不意に見つかれど
そこに私の
慈しんだ面影はなく
秘めやかな
乙女の純真
守る術など
存在しない

開かぬように最後の扉
幾重に、けれど開けるのは
たったひとつの鍵

変貌した形

取り戻す術など
もう何処にも
存在しない

[つづき]

■洗いながせ(仮)

伸びたホースが氾濫した
貴方はまだ帰らない
私1人じゃ治められない

放置し続けた自転車
新しい雑巾使って
拭いたら、明日、
貴方の大好きな
サイクリングに
連れてってもらうの

張り切って私は
１００円ショップ
目に入った白を即買い
隣で風を切れる
明日の私に胸を踊らせて

頑張ったのよ私
とびきり慈しんで
なのに通りすがり
土砂降り雨
私は荒んだいつもの私へ

威勢の良い水に荒らされ
身を叩き付け主張してる
倉庫の奥しまいこんでた
ホースは私の分身

伸びたホースが氾濫した
貴方はまだ帰らない
私1人じゃ治められない

[つづき]

■一閃(仮)

数ある世界の選択肢
"生"を選び取った魂
その色を擦り、汚し
何故 そうまでして
命の灯に抗うのか

僅かな期待も後悔も
受け入れた、微笑み
望み得る最大の安息
瓦解させたものは
希望を求め続けた
貪欲な正義である事を

刻めよ 選び取った
魂を裏切りし愚
明日の嘆きも全て
その胸の高鳴りが
導き出した貴様の
答　がおびき寄せたのだ、と

愕然と脚を折るが良い

災いの一閃
眩い雷の中で

[つづき]

■無限回廊(仮)

茶色いランプが灯る
足元すら霞む暗闇
ぽた ぽた ぽちゃん
水音は響いてる
限られた導きの音

差し延べられた
手が欲しい
続く壁を破る
拳が欲しい

いつまでも続く回廊
何も無いはずなのに
歩みを進める度に
何かを失った錯覚は
何を示すのだろう？

暗すぎて何も見えない

歩みを進める感覚など
とうの昔に失われました
墜落する感覚すらも
光を求む欲望に溶けた

[つづき]