■せめて 共に(仮)

意味を探すなんて
不毛なことだと
鼻で笑う
薄気味悪い友人が
大人になったと
嘯いている間に
僕は、彼が
落としていった
純真無垢なままの
羽根を捜し集めていきました

こんなにも まだ
綺麗なままで
色あせることも
出来ないままで

無念そうに
放された 白は
僕を 彼を 慰めるように
涙を流しました

（一緒に汚されることもなく。永遠に自由な白は
　孤独に打ちひしがれいつか消えてゆくのだろう　）

[つづき]

■生かす悲劇(仮)

左心房を突くような
痛むものが
私を生かす

感情の波紋を
こちらまで 届ける

動いたものが
言霊として
込み上げる

それが 私を つなぎ止める

潜む
籠る
希望
絶望

涙が出るから
｢まだ 生きていられる｣

何かが叫ぶから
まだ 生かされている

[つづき]

■どこまでも渦を巻く、黒（仮）

不意に飛び出した、死神
《殺せ 殺せ》
「囁くお前が死んでしまえ」、と
違う獣までもが渦を巻く

カラクリ仕掛の屋敷の内部
踏み倒したはずの壁の向こうから
鋭い視線に殺される

どす黒い感情に
支配されたらお仕舞いさ

身を任せる
魂ごと、掴まれる

内部から、破壊
なるほど効率の良い初歩の策
それほどまでに
単純化していた
自分自身にまた殺されました。

[つづき]

■思い上がらせる才能(仮)

絶対的な才能
などというものは
存在しない。
褒めて 褒められて
御鼻は高々と、
取り返しが付かない程に
手の施しようが無い程に
高々と。

もういっそ
丸ごと投げ捨ててしまえば
それで終わり、なんて
もうそんなに綺麗なものには
恐ろしくて
縋れませんの、よ

怖いくらいに舞い上がってしまって
これ以上私をどうしたいの
あちこちに綻びが絡まりついて
もう出てはゆけないのに
一番理解している貴方は
私を絡ませて絡ませて
見えないほどに成長した
頂を見据えて微笑むのね

[つづき]

■青の幻想(仮)

激しく頭を掻き毟る
指の爪もやがては剥げて
自らを自らで あんなにも手軽に
痛めつける事さえも
制限されてしまった

瞼の奥、
ぼやけてきた眼、眼を
抉り取って差し出しても
昇華はされず
鮮明な景色など
広がりもしない

[つづき]