■引篭もる影の人(仮)

尻込みした本能的な
負け犬現象
握る拳で潰せ
駆け巡るのは、快楽的な
失踪衝動

捻じ込んだ冷静が
毒々しく濁りだす
塞げ、いいや塞ぐんじゃない
朝昇った子供が見下ろした、
影に閉じ篭る大人

両手は顔を
覆うためにあるんじゃない
隠すためにある訳でもない
どうしようもないと
後ろめたさを広げ
俯く前に腕を広げろ

膝を折らずに前へダイブしたら
世界が一瞬、見下ろせる
自分の影の、滑稽な姿が。

[つづき]

■赤い糸(仮)

赤い糸が途切れ、途切れ
私に愛を告げているよ
『行かないで』『聞こえないよ』
知らない空気が
私を掠めていくの

糸の先は垂れ、爛れて
私の手を拒んでいるよ
もっともっと絡ませて
知らない空気に
絞め殺されてしまうわ

お先にさらば、なんて
言わない言えない聞こえない

ぎゅうぎゅうになるまで
引っ張ったの。千切れそうなの。
新しいのが来たら
すぐに取り替えたくなってしまいそうな程
「暫く見ないうちに随分女っぽくなって。」
流れ出しそうな妄想、
焼き殺して叫びましょう。いつか、へ。

[つづき]

■自惚れごと笑いでかえそう(仮)

ぐらつかないで欲しい、と
願い縋った腕も崩れると
「もういいかなあ」なんて
零れる愚痴は
全部、君への諦めの言葉
一週間以上も前の君なら
全部、叱咤激励してくれた、？
二人、熱心だった頃の君ならば

最終的に涙を拭って
最高潮に笑いに笑って
退廃的な夜を追い抜いて
空想的な明日を信じて

伸びて伸ばして
表情筋たちを
総動員しても
間に合わない

今まで　どれだけ
貰った　あのぶんだけ、
笑いを返してあげられるのは、
今、この時の他に、
二度と産まれそうもないのに。

■一方に傾く、(仮)

愛したい
愛されたい
二つは表裏
それでも人は
何故、何故、
こんなにも、何故、
繋がらない
重ならない

愛されたい
愛したい
二つは摂理
それでも人は
何故、何故、
これほどに、何故、
分かれていく
違えていく

例え二つが
異なる物でも
そんなの僕には
関係ない
関係ないよ

[つづき]

■疎外感(仮)

知らない世界に
投げ込まれた気分
気分を害するのは
おそらく私
、では、決してなく
いつもの作り笑いが
多少強張っている
不可解なことは、
私が“ここにいる”
という、事実

不可解が事実として
横たわるまま、
疑問符だけが渦を巻く

『とりあえず、帰ろうか』

不可解な、
私は、
そのまま
過去ってゆく
日常。